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<ナリワイインタビュー チャレンジ編>no.25 片岡真紀子さん 前編

ナリワイインタビュー第 18 回目からは、今年(2016 年度)、鶴岡ナリワイ実践道場に参加し「ナ リワイづくりへのチャレンジ」を行っている方々にお話を伺っていきます。ナリワイインタビュ ー25 回目は、2015 年兵庫県神戸市から、山形県最上郡鮭川村に地域おこし協力隊に赴任した片岡真 紀子さんにお話を伺いました。

建築に打ち込んだ日々

兵庫県神戸市出身の真紀子さんは父親の転勤の関係で、子どもの頃は、各地を転々としていました。2 歳から 9 歳頃までは山形市に住んでおり、田んぼで遊んだり、雪遊びをした記憶があるそうです。10 歳の頃からは兵庫県神戸市に住み、神戸市の工業高校の建築科に進学します。

「中学生の時、祖父母の家が増築工事をしていて、良くその現場を見に行きました。大工さんの 仕事を見ていて、『建築って面白そう』と思いました。その翌年には、阪神大震災があり、当時、 姉が建設会社の事務の仕事をしていて、これからは建築に需要がある、手に職をつけるなら建築 がいいかもしれないと思いました」

高校卒業後は、建築現場を経験したいと、小規模のゼネコンに就職。空き地を掘って、整地して 基礎を作り、建物が出来上がっていく仕事は面白かったと振り返ります。しかし会社の経営状況 が悪化し、入社 2 年で退職することになってしまいます。

退職後、真紀子さんは出身高校からの紹介で、大阪にある鋼菅(こうかん)の商社に入社します。

「私が入社した時、その会社は、自社工場で配管加工製品を作り、現場へ直接納品する新規事業を始める所でした。図面が書け、見積の計算ができる人として採用になり、CAD を使用して、毎日 パソコンで図面を書いていました。図面が出来上がらないと、工場が加工に入れないので、毎日 納期までに仕上げなければいけないプレッシャーがあり、肩こりが酷くなり、目が悪くなりまし た。会社とも考え方が合わない部分が多くなってきて、まる 6 年で辞めることにしました」

プロダクトデザインとの出会い 高校卒業した後、ずっと働いてきた真紀子さんは、専門的な学校で学びたいと考えるようにな り、プロダクトデザインを学ぶ専門学校に進学します。

「建築は、ものづくりとしては大き過ぎると感じていました。何か一つ作るのに、図面を書く 人、現場に出る人、現場の中でも基礎、コンクリート、鉄鋼、左官と様々な現場があり、仕事も 細分化されている。設計の人がこういうのを作りたいと描いても、最後までずっと携わることは 難しい。そういうものづくりではなく、企画から制作まで、自分が全行程携われるものづくりが したいと思っていた時、プロダクトという業界があることに気がつき、それを専門に学びたいと考えるようになりました」

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真紀子さんの学生時代のデザイン

アルバイトを掛け持ちしながら、10 代に混じって企画を考え、デザインし、ものを作っていく 日々は楽しかったと真紀子さんは振り返ります。 しかし、専門学校を卒業する年、リーマンショックが訪れ、いくらプロダクトデザインの会社に 応募しても就職が決まらない、就職難に陥ります。

「求人は少なく、即戦力募集。当時 30 歳近かった私が受かることは、今から考えれば難しかったんだと思います。1 年近く就職活動をしていましたが、全く決まらなかったので、ハローワークが 主催する、雇用対策講座で保育士試験の勉強をするプログラムを受講し、児童館や学童のスタッ フを募集していた NPO に就職しました」

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学生時代の友人と真紀子さん

子ども達と真剣に向き合う中で考えた日々

建設現場で休む暇なく働いていた真紀子さんでしたが、子どもの頃から保育士に憧れがあり、プロダクトデザインの学校でも、おもちゃを作りたいと思いながら勉強をしていました。おもちゃを作るのであれば、子どもたちの現場を知りたいと思っていた真紀子さんは、建設業界とは全く 違う保育の世界に飛び込んでいきます。

子どもに関わりだした真紀子さんは、NPO に勤めていた 5 年間で真剣に子どもと向き合う日々を送ったと振り返ります。

「週に 2・3回子どもたちと野外活 動をしていました。野外活動は楽しかったのですが、子ども達と接する時の自分の動き一つ一つ に意味を持てって言われて、考えさせられることが多かったです。 子どもに対して、私が何かアクションを起こした時に、なぜ自分がそういう動きをしたのか、そ れが何となくという理由ではなく、意図をもって動いて欲しい、何となくでは勿体無い。そのぐ らい子ども達に関わることは重要で、真剣さが必要なのだと、学ばされる事が多い職場でした」

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子どもを中心に置いて、子どもの気持ちを見守っていく、その理念が好きで働いていた真紀子さ んでしたが、休みがなく自分のことが置き去りになっていく日々に、このままでいいのかという 疑問も感じていました。

「私は仕事に集中すると、自分の時間の 80%~90%ぐらいを注ぎ込んで、仕事人間になってしまうんです。建築の仕事の時も、子どもの仕事でも。前職では『お友達のことも大事だけど自分のことも大事』と子どもたちに言っていました。でもそれを私自身に置き換えた時に、私は私のことを大事にできていない、仕事をするために生きているみたいになってしまうのは、もうやめたいと思ったんです」

後編に続く


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