兵庫県神戸市から、山形県最上郡鮭川村に移住し、ナリワイを模索している片岡真紀子さんのインタビュー後編です。(前編はこちら)
自然とともに暮らす日々を求めて山形へ
子どもたちと野外活動をしていた日々から、自然の中で季節を感じて暮らしたいと思うようになった真紀子さんは、子どもの頃、自然の中での日々を過ごした山形県に住みたいと考えるようになりました。
「山形で仕事を探している時に、地域おこし協力隊という制度があるということを知りました。 山形の自治体の募集があったので色々応募して、面接にも行きました。鮭川村に行った時に、役場の人や現役協力隊の雰囲気、山や、鮭が登ってくる川の雰囲気がいいなと思いました」
鮭川村に移住して朝起きて、ビルがなく、山が見えて、川がある風景が毎日見られるのが新鮮でした。毎朝 6時と 7時に村の防災無線が鳴ること、60 代~80 代の方々が、神戸にいた時は引退しているような感じだ ったのに、鮭川では活気があって元気なこと。ご飯もどこで何を食べても美味しくて、何もかも面白く、思っていた通りの生活が出来て幸せです。2年目からは、畑で野菜を作ったり、山で山菜やキノコを採ってきたりという、生活のために働いている感じがすごくシンプルで、望んでいた生活を過ごせていると感じています。
ナリワイとの出会い
同じ地域おこし協力隊で、今年度、鶴岡ナリワイプロジェクトの事務局である、蕗さんがフェイスブ ックでお知らせしていたナリワイの講座に興味を持ち、参加しました。協力隊になってから、3 年 間の任期が終わった後に、どうやって稼いで生きていくかということをずっと考えていて、ミニ 教室だったらできるかもしれないと思って、昨年度のナリワイプロジェクト中間発表会の時に、 消しゴムハンコを作るミニ教室を開催しました。鮭川村に行ってから、パッケージデザインを頼まれることが多かったのですが、デザイン料を払うという発想が村の方々に少なく、地域から頼まれた仕事をして食べていける気がしませんでした。自分なりに時間をかけてやっているけれど、これでいいのかと思うことも多かったので、ナリワイプロジェクトに参加したのは、協力隊という身分でいるうちに色々試してみたかったからだと思います。
ナリワイに参加して
私は、藁細工・つる細工が好きで、それを都会の人に売って稼いでナリワイにしようと考えていましたが、売って稼ぐ前に、それを色んな人に知ってもらい、次の世代に残せるようにしたいと考えるようになりました。食いぶちは見つけないといけないけれど、それとは別に、稼げようが稼げまいが、この藁・つる細工の技術を伝承しないといけない。そのための仲間づくりをしたいと思うようになりました。
成果発表会でつる細工のワークショップを経験して
人前で発表したり、人に教えたりするのはあまり得意ではないと感じました。私が教えるという形ではなく、興味がある人たちと仲間みんなでお互いに教えあうような形で、伝統技術の継承をしていきたいと思うようになりました。
今後の展望
今後も、つる細工の技術の向上を目指したいと思います。鮭川村や最上郡の中で、どれぐらい興 味がある人がいるのか知りたいので、ワークショップもやってみたいと思っています。年配の方で、すごい技術を持っている方がいるというのを感じている若い方は多いのではないかと思いま す。年配の方と若者と一緒になって出来る場づくりをしていきたいと思っています。 食いぶちに関しては、来年は、畑で作る作物の種類を増やし、産直などに出してみたいと思って います。
ナリワイをしてみたい人へのメッセージ
何かモヤモヤしていることがあれば、まずやってみることをお勧めします。ナリワイを見つけられるかは分かりませんが、一歩動き出すことで、自分に変化が何か起こるはずなので、まずは動 いてみることをお勧めします。 私は、鮭川村が好きすぎて、ナリワイに参加していなかったら、村を出る機会がとても少なかっ たと思います。ナリワイプロジェクトで、様々な地域の色んな人と試行錯誤できたことで、自分 自身の交友関係や視野が広がった気がしています。ナリワイに参加したことは自分にとって間違いなくプラスだと感じています。
インタビューを終えて
ナリワイプロジェクトに参加する以前から、親しくさせて頂いていた真紀子さんとは、以前から山での山菜採りやキノコ採りのことを話したり、一緒に鮭川村で田植えや鮭の遡上を見学したりと志向が近く、彼女にとってナリワイプロジェクトに参加したことはどんな意義があったのだろうと気になっていました。彼女の話を聞いていて、人口 6,000 人ほどの村で、3 万円稼ぐことと、 3 万円分の人間関係があることは同列か、もしくは後者の方に価値があるのではないかと感じまし た。住んでいる地域を楽しみ、地域に根差そうとする中で、「地域を利用するだけでなく、地域のメンバーとして役割を果たしていきたい。その中でも、地域に残る文化を継承していきたい。それは稼げるかどうかとは別の次元にある話なのだ」真紀子さんの話は私にはそのように聞こえま した。
「月 3 万円ビジネス」の藤村先生が言っていた、win-win の関係が、真紀子さんと鮭川村の方々の間に起こりつつあること。それにナリワイプロジェクトが一役かっていること、嬉しいと感じま した。(つづりかた蕗)
※ライターへのインタビュー・記事・原稿のご依頼は「つづりかた蕗」huki1222@gmail.comへお願い致します。
片岡真紀子さん 30代 兵庫県神戸市出身 山形県鮭川村で一人暮らし
鮭川村地域おこし協力隊FB https://www.facebook.com/sake.kyouryokutai/
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