30代前半の頃、一念発起しオープンしたお店をたたんだ和美さん。しかしながら、これまでつながった人脈や手にした技術がなくなるわけではありません。家での冷却期間を終え、また動きだしました。そんな伊藤和美さんのインタビュー後編です。
(前半はこちら)
家からあまり出なくなった和美さんの姿を見た旦那さんから、「また外で働いてみたら。」といわれ、臨時で庄内町の米コンテストの事務を半年ほど勤め、その後東北公益文科大学(以下公益大)の”紅の花ふる里再生協議会”で働いた和美さん。紅花を通じた町づくりや、情報発信など、アクティブに働き始めることができました。
紅の花ふる里再生協議会の期間が終了するころ、お世話になっていた男女共同参画の政策などを研究テーマにしている公益大の伊藤眞知子教授から声をかけられます。「子育て支援のWEBサイトの立ち上げをするんだけど一緒にかかわってみない?」
自分自身も仕事と子育ての両立の中で悩んだ経験もあり、同じ境遇や悩みを持つお母さんたちが情報を得たり、誰かとのつながりを見つけるきっかけになるサイト作りに意欲がわきました。そして、何よりも少しでも前向きに気持ちを楽に子育てができたら、と思い、取り組むことにしました。平成22年に庄内地域子育て応援協議会が発足し、和美さんもメンバーの一人として動き始めました。
活動では、庄内地域子育て応援サイト「TOMONI」を運営。庄内2市3町の子育て情報が掲載されています。現在、サイトは子育て応援協議会のOGで2014年に作ったNPO法人明日のたねが運営しています。
ナリワイプロジェクトと出会ったタイミング
ちょうど同じころ、鶴岡ナリワイプロジェクトの前進のナリワイづくり工房@鶴岡がスタートしました。和美さんは、スタート前に開催された「月3万円ビジネス」の藤村靖之先生の講演と、複数の仕事をいくつもする「複業」の考え方に興味を持ちます。自分の得意を生かして、固定費をかけずに仕事をするというのは、今まで似たような意識でやってきた和美さんにとって、スッと入ってくる考え方でした。
「私が20代、30代の頃、時間を分け工夫し、頼まれごとや自分のやりたいことをいくつも掛け持ちして仕事をしているのは、周りからなかなか理解されませんでした。だけど、今の時代なら受け入れられる部分もあって、何事もタイミングと時期ってあるんだなぁと思いました。」
和美さんが立ち上げた”あそぶまね部”では、中間報告会で子どもたちとのバスボム作りを実施しました。和美さんは、これまでも講師として重曹やアロマに関する仕事もいくつかしていました。庄内でも、現在、アロマやハーブ、癒しなどに関するプロが増えていく中で、自分が持っている技術でどんなナリワイができるのだろう。と悩んだ時期もありました。
和美さんは、そんな状況の中、「同じ思いの同業の人を、ライバル心で敵対したり、やり方が違うからって目を背けることは違う。それより自分をブランディングしていきたい。知識と技術は学んで習得できる。そこに私だからできることを合わせて、私にしかできないことをやりたい。」と考えるようになりました。
“合言葉は行き当たりばっちり”
アロマでは、これまでのネットワークを活かして、教育機関で働く人たちへのコミュニケーションを交えたマッサージの講座。地域支援では仲間と共に仕事、子育て、家庭のことを、大変な部分、楽しい部分、全部丸ごと向き合って、その人らしい暮らしを作っていけるお手伝いをしている和美さん。
「私自身、子育て支援も講座も、うまくいかなかったかな、という時もある。でも、やってみなきゃわかんないし、悩みながら動き続けるしかないこともたくさんあって、思い切った行動もたまには大事です。たくさんの人に理解してもらうのは難しい部分もあるけれど、うまくいったときは本当にうれしい。そして分かち合える仲間がいるというのは幸せです。」
「創業というと、お金を借りてやるというのがこれまでの常識だけど、ナリワイの考え方は違う。固定費をかけないで、自分の範囲で起業するというのがいいですよね。それに気の合う別の特技を持っているメンバーとコラボすることで、やることに深みが出る。お互いの得意を活かしあえる。仲間と相談しながら小さく起業ってすごくいいです。そして、私も相談したり、相談に乗ったりできる人でいたいと思うし、みんながやりたいことができる世の中になったらいいな、と思います。」
伊藤和美さん
庄内町生まれ・庄内町在住。
旦那さんの実家で義祖母、義父母、旦那さん、子ども2人の7人暮らし。
特定非営利活動法人 明日のたね
https://www.facebook.com/asobu.manebu.tane
子育て支援サイトTOMONI
インタビュー後記
今回のインタビューは、和美さんと共に苦楽を共にしてきた仲間も隣で話を聞いてくださいました。あんなこともあったよね~とお二人で笑いながら話してくださったのが印象的でした。まったく同じ考えではないからこそ一緒にいてできるものがあるんだな、と強く感じました。(文・写真 稲田瑛乃)
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