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<ナリワイ女性インタビュー チャレンジ編>no.22 野木桃子さん 後編

今年度、鶴岡ナリワイ実践道場に参加し、管理栄養士の資格を持ち、山形県西村山郡大江町で地域おこし協力隊として活動しているの野木桃子さんのナリワイインタビュー後編です。
(前編はこちら

発見の連続の日々

福島県の実家から、再び山形に戻った桃子さんは、大江町の朝日連峰の麓、七軒地区で一人暮らしを始めます。

「『地域おこし協力隊』という名目で、大江町に来ましたが、『地域おこし』って具体的に何をしていいのか良く分からなかったので、地域のこと色々知って好きになろうと思って、自分の名前と電話番号を持った紙を持って、各家、挨拶に回りました。その結果、地域の方々が色々声をかけてくれるようになり、毎年8月に開催される大江町の花火大会に合わせて、地域の方から和裁を教えてもらい、浴衣を縫いました。」15724706_1205058499585880_302346853395766669_o

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和裁を教えてくれた地域の方

地域を回っていると地域の方々が、見たこともない食べ物のこと、昔の地域のこと、様々なことを教えてくれる。「こんな素敵な場所が地域にある!」「こんな素敵な人が地域にいる!」と発見の毎日だった桃子さんは、この地域で見つけた色んなことを手紙のような形で、地域の方々に届けたいと考えるようになりました。

「『あどぼい日記』という地域新聞を2015年11月から始めました。『あどぼい』って後追いの意味で、美味しいものをついつい後を追って食べたくなるみたいな言い方で『あどぼいすったぐなる』とかいうんですけど、この地域の魅力が、あとを追ってどんどん出てくるのを書き綴ってみなさんに読んで貰いたいと思って名前をつけました」

と桃子さん。時々、自分の配布地区を決め「あどぼい日記を届けにきました!」と各地区(七軒地区内)ごと、一軒ずつ挨拶も兼ねて伺っていると言います。

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「毎回、初めてのお宅に伺う時には緊張するし、3軒ぐらい回ると疲れることもあるけれど、よく考えたら地区の人たちはそれを自然にやっているんです。回覧板回したり、地区の案内配ったり。私もそういう存在になりたいと思いました。」

桃子さんは、大江町に引っ越してきたばかりの頃、大江町の中心地に住む方々に、「あんな何もなくて寂しい所に住むの」と言われていたそうです。。

「確かに、私が住んでいる地域は、買い物できる所もない、雪が多くて、寒くて、暗い場所かもしれない。けれど、ここに住んでいて、『大変な暮らし』をしているはずの人達は、山菜やキノコやアケビのツルや色んな山のものを生活に取り入れて、山や森のそばにいることを楽しんで暮らしている。その『楽しい』生活を知るために地域を歩き回った1年があったから、私は今、地域の人たちと同じように『楽しく』この地域で暮らしが送れるようになりました」と桃子さんは振り返ります。

「雪が降ってから作る、凍み餅(しみもち)ってあるんですよ。大雪が降る寒い場所だからこそ、作れるものがある。ここがここであることの良さを色んな方から聞いて、それを実践してみるのが楽しくて、それがこの山奥での楽しい暮らしになっていく。そのライフスタイルが私にとても合っているのだと気づきました」

15595965_1244177462296983_896181859_oナリワイプロジェクトとの出会い

ナリワイプロジェクトの事務局の稲田さん、昨年度参加者の橋本さんとは、元々知り合いで「鶴岡ナリワイプロジェクト」で活動しているのはなんとなく知っていました。大江町での1年目の冬が終わる頃、私は今後どんな仕事をするんだろうと考え始めました。ここから山形市に通えば、栄養士の仕事があるかもしれない。でもそうやって仕事で通い出すと、自宅から往復1時間の通勤が苦痛になると感じたんです。私の生活の場は、山の麓のこの地域がいい。地域行事に参加したり、山で採ってきたもので遊んだり料理したり、山を散歩したりして生きていきたい。そう思ったら、ここで仕事をつくらねば、できるかどうかは分からないけれど、可能性を探りたいと思うようになりました。

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大江町からの依頼で制作した大江町 花火大会の招待客プレゼント

ナリワイに参加して

起業にはリスクというイメージしかなくて、私は絶対起業はしないと思っていたのですが、小さく起業という考え方もあるのだというのを知りました。私は協力隊として地域新聞を作ったり、林業女子会をやっていたり、色んなことをやっているけれど、「◯◯といえば桃子」というもの がなくて、協力隊が終わったら自分に何が出来るのだろう、どうしていくのだろうということが見えていませんでした。

私は地域の素材で売れるものを沢山作りたい訳じゃないんだな、と気がついて。ノートがいっぱいになるほどの、地域の方から教えて貰った技術や知恵を残したい、伝えていきたいのだと気がつきました。成果発表会では「木を食べる」という地域にある木の実や花の蜜、昔、地域の方々が飢えに苦しんだ時に食べた木の皮の話など、地域に残る物語をワークショップ形式でお伝えしました。

ただ、地域のものを提供したり、展示したりするだけではなくて、「地域の方々の物語ごと」、「どういう人がどういう想いで」という部分を表現したい。今年、そういう機会に恵まれた時に、地域外の人たちの反応が凄く良くて、地域の物語を私が話すことが、付加価値になることに気がつきました。

私は今まで、主役は地域の人で、私は目立ってはいけないと思っていたし、情報発信も地域の人に向けていました。でも、いつの間にか、地域の人のお話は、私の中で物語になっていて、それを地域の外の様々な人に向けて発信していくのが役目なのではないかと気がつきました。

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今後の展望

地域おこし協力隊の任期があと1年半あるので、この地域のことをさらに知って、それを地域外の人に発信していくようなワークショップや情報発信をしていきたいと思っています。鶴岡で、鶴岡の方々に「大江町の山での暮らし」を知ってもらいたいのもあるし、各地域で少しずつ違う所、同じ所があるのも面白いと思います。この地域の価値をお伝えして、色んな人にこの地域を訪れてほしい。そんな役割ができればと思っています。また今後は、他の地域にも目を向けて、色んな地域の郷土料理を知りたいと思います。山は山ならではの、海は海ならではの知恵や技術があり、その地域に合わせた保存食がある。そう言った様々な地域の食を知り、日本の文化を深掘りしていきたいと思っています。

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ナリワイをしてみたい人へのメッセージ

ナリワイの「好きなことしかやらない・世の中にとっていいことしかやらない」って最強なんだと思います。自分がいいと思っているもの、好きって思っていることを相手に伝えて、それを共有できたら素敵なことだと思います。

売り込もうって思わないで「好きだから・とってもいいから」って思って売っている人って、どんな質問にも答えられると思うし、それは伝わるものだと思います。これがビジネスになるのかと不安に思うかもしれないけれど、まずはチャレンジしてみてはいいんじゃないかなと思います。好きこそ物の上手なれです。

インタビューを終えて

県内で活動する地域おこし協力隊の中でも、特に過疎化が進む山里の地域に住む桃子さん。彼女は「買い物をする所もないけれど、この地域での暮らし一つ一つがとても楽しい」と言います。山里の地域で、その良さを記録し続けている彼女が、これからどのように地域を発信していくのか、それがどんなナリワイになっていくのか、将来が楽しみだと感じました。(ライター:はしもと蕗)

※ライターへのインタビュー・記事・原稿のご依頼は「はしもと蕗」huki1222@gmail.comへお願い致します。


野木桃子さん 20代 福島県伊達市(旧保原町)出身 山形県大江町で一人暮らし

So-tennen
大江町七軒地区を中心に活動する、自然と人が寄り添う社会づくりをお手伝いするグループ
HP:https://so-tennen.jimdo.com
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林業女子会@山形
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